■2. 革新的医療技術の方向性 1990年ヒトゲノム解析国際プロジェクトが開始され,今日ほぼ作業は完了しつつある.従来医用工学は,電気,機械,情報,化学などを基盤にしていたが,今後はこれらに加えて,ゲノム情報を基盤としたバイオテクノロジーとの融合化が必要になる.20世紀初頭の第一次・第二次産業革命により今世紀のあらゆる科学技術が立ち上がってきたのと同様に,21世紀はバイオテクノロジーによりさまざまな新技術が創出され,医療技術もまた新しい幕開けが始まる.新医療技術は,単に医療の技術面だけを進化させるばかりでなく,医療そのものの概念を変化させていく.すなわちポストゲノム医療技術は,21世紀における“医療のパラダイムシフト”を生じさせることになる. これまでの医用生体工学(Medical and Biological Engineering)の発展の歴史を振り返ると,1960年ころから本格化したが,私見として1960〜1975年を第1世代,すなわち,電子工学,制御理論やオートメーション技術を基盤にした医用工学の黎明期,続く1975〜1990年の第2世代を半導体技術の高度化やコンピュータ技術の著しい進歩により画像技術が花開いた時代と考える(表1).続く第3世代は1990年代の10年間で,1980年代のIT技術を更に進化させた三次元画像診断や内視鏡手法に基づく低侵襲診断・治療が花開いた時代である(表2).同時に,マイクロ・ナノテクノロジーや分子生物学なども大きく進展した時代でもある.既に三次元立体画像支援による低侵襲外科手術が先駆的に始まっているが,近い将来術中迅速病理診断にもDNAプローブが導入されバイオテクノロジーとイメージングが本格的に融合化する時代が到来するものと予測される.すなわち,2000年以後の第4世代のMBEは,遺伝子工学や組織・細胞工学を中心とした新たな科学技術が,医療技術に導入される時代となる(表3). |
世代
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主要技術
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対象
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代表例
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患者利益
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診断
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治療
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質
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リスク
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第1世代 (1960〜1975) |
・電子工学 ・制御理論 ・自動化技術 |
臓器 器官 |
・生体信号計測技術 ・生体信号監視技術 ・血液生化学自動分析装置 ・病院情報システム |
・機能的電気刺激 ・人口臓器 |
低
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襲撃 |
第2世代 (1975〜1990) |
・半導体技術 ・コンピューター技術 ・画像技術 ・オプトエレクトロニクス |
組織 | ・画像診断技術(超音波、X線CT、磁気共鳴画像、ポジトロンCTなど) ・コンピューター支援画像解析技術 |
・レーザ治療 ・体外衝撃波結石破砕装置 ・温熱療法 (ハイパサーミア) |
中
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軽侵襲 |
世代
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主要技術
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対象
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代表例
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患者利益
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診断
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治療
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質
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リスク
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第3世代 (1990〜1999) |
・高度情報処理技術 ・メカトロニクス (マイクロマシン、超微細加工技術) ・分子工学技術 |
細胞 | ・三次元画像技術 ・内視鏡診断技術 |
・コンピューター支援外科手術(CAS) ・経官的内視手術 |
高
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低襲撃 |
・インターベンショナルテクノロジー ・分子生物学 |
世代
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主要技術
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対象
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代表例
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患者利益
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診断
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治療
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質
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リスク
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第4世代 (2000〜) |
・細胞工学 ・組織工学 ・遺伝子工学 |
生体分子遺伝子 | ・遺伝子診断 (DNAチップ、DNAマイクロアレー) ・一塩基多型診断(SNPs) |
・再生医療 (細胞治療) ・遺伝子治療 |
優
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非侵襲 |
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