【 アクセスネットワークの現状と将来展望 】

三 木 哲 也   篠 原 弘 道



(3) HFC

 2.で紹介したHFCによるIP通信は,下り方向には6MHzの映像チャネルを用いて高度な変調技術によって30Mbit/s程度の伝送が可能である.更に容量を増やすには複数のチャネルを用いることもできる.しかし,上り方向はもともと帯域が限られており,合流雑音の問題もあって,速度が限られる.そのため,HFCは一般に非対称システムであり,ADSLと同様にホームユーザに適している.他方,このシステムは帯域共用型であり,一つのツリー網の規模がPDSに比べてはるかに大きいので,IP通信のトラヒックが大きくなると通信速度の低下も大きくなる.

(4) FWAとIMT-2000

 無線通信を移動性の観点から分類すると,FWA (Fixed Wireless Access:固定無線),MWA (Mobile Wireless Access:移動無線),両者の中間的な位置付けであるNWA (Nomadic Wireless Access)の3種に大別することができる.

 FWAの使い方はFTTHなどと同じであるが,散在したユーザを経済的に収容できる点や,設備構築に要する期間が短く即応性に優れている点が特徴である.FWAには,準ミリ波帯を用いる方式と,無線LAN技術を応用した方式の2種類に大別できる.前者には,point-to-point方式とpoint-to-multipoint 方式があり,数Mbit/s〜数十Mbit/sの帯域を持つシステムが開発されている.

 一方,これからのモバイルインターネットに最も期待されているのが第3世代移動通信システムであるIMT-2000 (Intelligent Mobile Telecommunication-2000)である.現在の携帯電話に比べて通信帯域を飛躍的に広げて2Mbit/sまでが可能である.ただし,広帯域になるに従って移動性に制約が出て,2Mbit/sに近い通信は,室内で止まって使うことを想定した設計になっている.


(5) 衛星・放送波

 ディジタル衛星通信の普及に加えて,ディジタル衛星放送,更にディジタル地上波放送が始まろうとしている.これらを伝送媒体としてとらえると,家庭への広帯域ディジタルアクセスが実現することになる.これらは,下り方向であるが低廉な大量情報伝達手段となる.一般ユーザのIP通信は下り方向の情報が圧倒的に多いことから,ディジタル放送と既存のアクセスネットワークを組み合わせることで多様な新たなサービスが考えられる.同種のネットワーク形態として,衛星通信とISDNを組み合わせた遠隔講義システムなどが既に実用化されている.




■5. 宅内・構内ネットワーク

  IP通信の高速化への要求に併せ,ユーザの宅内・構内の広帯域化を図る必要がある.ユーザ宅内・構内の環境は様々である.建物の形態を見ても,一戸建て,集合住宅,オフィスビルと様々であるし,新築・既築の違いがある.また,オフィスビルでも各部屋が仕切られている場合と,大部屋の場合がある.新規の配線が容易な場合と困難な場合がある.このように多様なユーザ宅内・構内環境で,多彩な利用形態を実現するためには,種々の宅内・構内ネットワークのメニュー化が重要になる.無線や対ケーブルあるいはプラスチックファイバなどを用いた様々な方式が提案・開発されている(表1).これらの方式を状況に合わせて使い分けていくことが必要である.



表1 現状の宅内・構内システム
(有線を利用)
-
既設配線利用
新規配線利用
xDSL
HomePNA
Digital Way*
LAN
プラスチックファイバ
IEEE1394
伝送媒体
屋内電話線
屋内電話線
TV用同軸
UTP
POF
STP
伝送速度
<G.lite>〜1.5Mbit/s
(Ver.2:10Mvit/s)
10Mbit/s
10Mbit/s/100Mbit/s
<SI型>
〜150Mbit/s
400Mbit/s
伝送距離
宅内/構内利用ではほとんど問題ない
150m(Ver.2:30m)
200m〜
(端末間)
100m
(端末からHUB間)
100m
〜150m程度
4.5m
*Digital Way:ランゲート社

(無線を利用)
-
ワイヤレスTA
(構内PHS方式)
無線LAN
HomeRF
Bluetooth
5GHz無線LAN
伝送速度
64kbit/s
1〜8Mbit/s
1.6Mbit/s
-
36Mbit/s
伝送距離
100m
50〜100m
50m
10m
〜50m
利用帯域
1.9GHz 帯
2.4GHz 帯
2.4GHz 帯
2.4GHz 帯
5.2GHz 帯


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