1.総   論 【 1-2グローバルコンピューティング時代のシミュレーション  】

関   俊 司

5. お わ り に

 1990年代半ばからのインターネットの爆発的な普及により,21世紀には,世界中のコンピュータが高速のネットワークを介して接続されるグローバルコンピューティングの時代が本格的に到来するだろう.そして,メタコンピュータというコンセプトをベースに,スーパコンピュータ,計算機クラスタ,ワークステーション,PCなどあらゆる種類の計算機資源が有機的に接続されたコンピュータグリッドが形成され,21世紀の高性能計算環境のインフラストラクチャとして大きな役割を果たすことになろう.

 このような計算機環境の変化は,科学技術分野ばかりでなく,多くの産業技術分野,特に,もの作りの現場に大きなインパクトを及ぼすことになるに違いない.例えば,いち早く国際競争の波にあらわれている自動車産業では,コンピュータシミュレーションを駆使し,いかに実車試作の回数を減らして,開発コスト,期間の短縮を図るかが,既に競争力強化の鍵の一つになっている.実際,1980年代には30か月以上を費やしていた新車開発期間は,2000年代には12か月以下にまで短縮されるだろうともいわれている.

 今後,このようなコンピュータシミュレーションの活用による開発のスピードアップ化,低コスト化の要請は,情報通信を含む産業分野全般に及ぶことになるだろう.そのような状況では,計算に要するコスト(TCC:Total cost of computation)という考え方がより重要になるに違いない.その意味からも,本稿で紹介した計算機クラスタやメタコンピュータは,21世紀の産業基盤を支える低コストの高性能計算環境を構築する上で重要な役割を果たすものと考えられ,グローバルコンピューティング時代の到来に向けて,今後更なる研究の発展が期待されている.



■文     献  

(1) 富田眞治,並列計算機構成論,昭晃堂,1986.  
(2) 村岡洋一,並列処理,昭晃堂,1986.  
(3) 天野英晴,並列コンピュータ,昭晃堂,1996.  
(4) R. Buyya, High Performance Cluster Computing, vol. 1, 2, Prentice Hall 1999.  
(5) The Grid: Blueprint for a New Computing Infrastructure, Ian Foster and C. Kesselman, ed., Morgan Kaufmann, 1999.  
(6) TOP500 - http://www.top500.org/  
(7) ASCI - http://www.llnl.gov/asci/  
(8) NSF - http://www.interact.nsf.gov/cise/descriptions.nsf /pd/tcs/  
(9) 地球シミュレータ - http://www.gaia.jaeri.go.jp/  
(10) Beowulf - http://www.beowulf.org/  
(11) NOW - http://now.cs.berkeley.edu/  
(12) PAPIA -http://www.rwcp.or.jp/papia/papiaJ.html  
(13) KLAT2-http://aggregate.org/KLAT2/  
(14) CPlant-http://www.cs.sandia.gov/cplant/  
(15) NT-http://www.ncsa.uiuc.edu/  
(16) Avalon-http://cnls.lanl.gov/avalon/  
(17) 石川,“コモディティハードウェア技術を用いた並列処理技術,”情報処理,vol.39, no.11, pp.784-791, Nov.1998.  
(18) TRAPEZE: http://www.cs.duke.edu/ari/trapeze/  
(19) C. Catlett and L. Smarr, "Metacomputing," Commun. ACM, vol.35, no.6, pp.44-52, June 1992.  
(20) Globus-http://www.globus.org/
(21) Legion-http://www.cs.virginia.edu/T legion/  
(22) Ninf-http://ninf.etl.go.jp/  
(23) ComputingPortals-http://www.computing portals.org/  
(24) 松岡,ほか,“OpenJIT,”信学技報,CPSY98-67, pp.49-56, 1998.





関 俊司(正員)せき しゅんじ

 1979早大・理工・応物卒.1981同大学院修士課程了.
同年日本電信電話公社(現NTT)入社.1991〜1992イリノイ大客員研究員.
以来,NTT研究所において,フォトニックデザインオートメーション並びに,高性能計算環境の研究に従事.現在,(株)NTTエレクトロニクス経営企画本部担当部長.
工博.応用物理学会,IEEE各会員.




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