【 画像で見せる ──CG技術のヒューマンコミュニケーションへの応用── 】




5. タッチトーキング

 5.1 障害者とヒューマンインタフェース

 心身に障害を有する者が情報機器を使おうとした場合,ヒューマンインタフェースが問題になる.身体的障害が重度になるに従い,主にハードの工夫が必要になる.すなわち,より単純な操作で目的が達成できる仕組みが必要である.また,知的障害が重くなるに従いソフトヘの配慮が欠かせない.例えば,漢字を使わないとか,絵のみで構成するとかの工夫が要求される.

 重症心身障害者では,パソコンを操作する部位は必ずしも手ではなく,足の一部であったり,首であったり,頭であったり,唇であったりする.その場合,スイッチのオン,オフのみで制御できることが必要である.


 5.2 コミュニケーションの原理

 様々な実験の結果,人間の意志の発現はまず「動詞」から始まることが分かり,タッチトーキングでは図5に示すような9コマの「行動を示す絵」をディスプレイに表示し,動詞をまず選ぶ.選択の方法は赤枠が選びたいパターンに掛かったときにマウスのポインタに接続されているスイッチをオンにすればよい.図5の場合,「食べたい」が選択されている.


図5 タッチトーキングの動詞のイラスト画面
  この図は第2画面の中の「食べたい」を選択したところ.



 5.3 コミュニケーションの事例

 動詞として「食べたい」が選択されると,「食べ物」の9コマ画面が現れ,これを決定すると,「状況・場面」が表示される.図6に「食べたい」,「ラーメン」,「昼」が選択された結果を示す.三つの絵の選択を終えると,音声と文字を伴い「お昼にラーメンを食べたい」と表示される.


図6 第3画面の決定をクリックするとディスプレイされる画面
  この画面に合わせて,「お昼にラーメンを食べたい」と音声が発せられ,文字もディスプレイされる.



 音声は利用者にフィードバックとして働き,会話の内容が自分の意志に合っているか否かの判断基準を与える.また,図6の「いままでの文章」という部分に過去の会話の履歴が記録されるようになっている.この効果は対話者に対する「メッセージ」やプリントして,手紙などにも活用されている(11).


 5.4 画像の蓄積

 会話の志向,内容は個人によって大きく違うものである.本システムにおいては,基本ソフトと「動詞」,「動詞に対応する物」,「状況・場面」に分類したデータをCD-ROMで提供し,本人の要求によって保護者や施設職員が簡単な組合せによって図5に示すようなソフトが構成できるようになっている.各々の画像データファイルには音声と文字が付随していて,絵を選ぶと音声と文字が組み込まれる.また,「て,に,を,は」はソフト製作者が文構成を考えて組み込むようになっている.

 問題は,いかにたくさんの基本画像をデータベースとして蓄積するかということで,内容を端的に表現する「気の利いた絵」が必要である.このことによりコミュニケーション内容が豊かになる.

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