【 画像で見せる ──CG技術のヒューマンコミュニケーションへの応用── 】

青木 由直  山形 積治

電子情報通信学会会誌

Vol.83 No.9 pp.660-664
2000年9月
青木由直:正員 北海道大学大学院工学研究科電子情報工学専攻
 E-mail aoki@media.eng.hokudai.ac.jp

山形積治:正員 北海道教育大学旭川校物理教室
 E-mail yamagata@atson.asa.hokkyodai.ac.jp

Image-Aided Presentation:Application of CG Techniques to Human Communication. By Yoshinao AOKI, Member (Graduate School of Engineering, Hokkaido University, Sapporo-shi, 060-8628 Japan) and Sekiji YAMAGATA, Member (Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education, Asahikawa-shi, 070-8621 Japan).

1. は じ め に 2. 非言語コミュニケーションとCGの接点 3. “化身話”コミュニケーションシステム
4.重症心身障害者のコミュニケーションへの応用 5. タッチトーキング 6. ま  と  め




1. は じ め に

 急速に展開するコンピュータと通信技術は,新しいコミュニケーション領域を拡大しつつある.それらの分野にはサイバースペースにおけるAvatar(1)によるコミュニケーションがあり,重い障害者の外界とのコミュニケーションがある.インターネットのグローバル化により,異言語の壁が顕著になってきてその対処とか,重い障害のために内言語を表現する手段のない者へのコミュニケーション支援とか,新しい研究領域も拡大している.

 英国の障害者団体の指導者ピータデイキンは「A micro-chip is the great leveller」という表現を用いて,コンピュータの活用による格差のない世界を予言している(2).本稿においては,「A micro-chip」の創り出す技術やそれから発展したCG技法によって,異言語や重症心身障害者が障害の壁を超えるコミュニケーション技術の研究成果とこれからの可能性について述べる.



2. 非言語コミュニケーションとCGの接点

 人がコミュニケーションを成立させるためには,同一の言語を用いることが普通である.しかし,同じ言語を共有しなかったり,障害により言語機能を失っていた場合,我々が取るコミュニケーション手段にはおおよそ2通りの方法が考えられる.  まず「ボディランゲージ」すなわち,手真似足真似といわれる方法である.これには表情も含まれる.手話(後述の化身話)は抽象化されたボディランゲージである.この場合,異文化の間には「異なったしぐさ」もあり意志伝達上完全ではなく,誤解を招く場合もある.身体に重い障害がある場合,付随運動を伴い内言語と一致したボディランゲージにならないことが多い.更に筋肉疾患を伴った障害者の場合,ボディランゲージそのものの行為ができない.

 次に「シンボルや絵」を用いる方法である.異言語間の会話においても確実とはいえないが,ある程度の意志の伝達が行える.この方法は国内外の障害者の施設において広く利用されており,脳内での情報認知速度も速い(3).コンピュータが有する即時性,優れたCG機能を活用するとすれば,CGによる「絵やシンボル」は言語以外のコミュニケーション手段として有望であると考えられる.障害者等に適用する場合にはシンボルや絵のCG画面に字幕,音声を付加することによって,優れたコミュニケーションツールになる.




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