アナログ LSI
 analog LSIs



 素子ばらつきが大きく, インダクタンスや大容量のコンデンサの使用や,電源電圧に制限がある集積回路上でのアナログ回路の実現においては, 個別トランジスタ回路と異なる独特の基本回路が多用される.エミッタ結合対,カレントミラー, レベルシフト回路,スイッチトキャパシタ,アクティブ負荷,アナログスイッチ,安定化電源回路(三端子レギュレータ), 基準電圧回路(バンドギャップリファレンス)などである.これらの基本回路により,演算増幅器やビデオアンプなどの基本増幅回路が実現され, また, 演算増幅器を基本要素としてアクティブフィルタやスイッチトキャパシタフィルタなどのフィルタ, さらにディジタル信号処理のアナログインタフェースである A-D 変換器, D-A 変換器,サンプルホールド回路へと展開される. LSI チップ上に同時に搭載された素子は, 絶対素子のばらつきは大きいが素子値の比のばらつき(相対ばらつき)は小さく, この特長をうまくいかした回路構成による A-D・D-A 変換器やスイッチトキャパシタフィルタは集積回路化に非常に適している.
 音声処理では, 電話用音声 CODEC やディジタルオーディオ用など, 精度13〜16bit, サンプリング速度8〜50ksps程度で,荷重回路網による逐次比較方式や最近主流となったΔ-A-D・D-A 変換方式が用いられる.画像処理では現行 TV 放送 NTSC 用の8bit/20Mspsや高精細 HDTV 用の10〜12bit/50〜80Mspsがある.高速化に有利な並列比較方式(フラッシュ)や直並列方式が用いられている.
 以上の回路機能ブロックを基本として, TV/VTR 信号処理 LSI ,ハードディスクリード・ライト LSI , 液晶ドライバ LSI など, 民生用各種アナログ信号処理 LSI が開発されている.通信用では, 光送受信回路, 携帯無線用 RF 回路, 各種,変復調 LSI ,ベースバンド信号処理 LSI がある.ディジタル信号処理( DSP : digital signal processing )回路に, 演算増幅回路, A-D・D-A 変換器, フィルタ, 電源回路などのアナログ要素ブロックを搭載し, システムを一つのチップ上にインテグレーションするシステムオンチップ化,アナログ・ディジタル混載 LSI へと発展してきている.システムオンチップ化では, DSP 用各種内部クロック生成や外部との信号のやりとりのための分周, 逓倍, 位相・周波数同期を行う PLL が重要な機能ブロックとなる.
 一層のシステムインテグレーションの展開は, 低消費電力化, 低電圧電源化, さらに雑音混入の抑圧のための高アイソレーション技術が課題となっている.エレクトロニクスは本来アナログであり, 非常に多様である.また, かつて集積回路化が困難とされていた電話用加入者線終端回路やスイッチングレギュレータなどの300V級高耐圧回路, 各種センサ素子を搭載したセンサ LSI など, 多様に LSI 化が図られている.
(赤澤)




(C)社団法人 電子情報通信学会 1998