名誉員 推薦の辞
津田 俊隆
  津田俊隆君は,昭和45年東京大学工学部電子工学科を卒業,昭和50年同大学院工学系研究科電気科博士課程を修了され,その後,株式会社富士通研究所に入社されディジタル信号処理に関する研究に従事されました。昭和53年から1年間,客員研究員としてカリフォルニア大学バークレイ校に滞在され,平成元年富士通研究所情報通信研究部長,平成12年に同社取締役,平成13年に同社取締役(兼)欧州富士通研究所社長,平成17年に同社常務取締役,平成18年同社常務取締役(兼)米国富士通研究所会長を歴任され,平成22年同社フェローとなられました。平成24年4月から早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授として後進の指導に邁進しておられます。
 同君は,富士通研究所に入社以来,長年にわたりディジタル信号処理技術ならびにその応用に関する研究開発に取り組まれ,ディジタルMODEM,SDH/SONET,ならびにISDNシステムの実用化に大きく貢献しました。昭和50年代には世界最高速の高性能DSP(Digital Signal Processor)を設計し,フルプログラミング DSPによる 4800 bits/s デジタルモデムを実現しました。このDSPの先進的なアーキテクチャにより,その後の音声・画像通信システムや携帯電話など, DSPおよびディジタル信号処理技術の応用領域は大幅に拡大しました。昭和60年からは広帯域通信技術の国際標準化を行うCCITT(現ITU-T) SG18のSDH/SONET関連勧告のドラフトメンバーとして活躍され,G.707-709 などの技術勧告策定に重要な役割を果たすと共に,その後のSDH/SONETや,国内のみならずシンガポールや北米向けISDNシステムの構築とその実用化に多大な貢献をなされました。
 昭和62年からは広帯域マルチメディア通信を活用するための主要技術として画像コーデックの標準規格策定に深く関わり,ISO/IEC MPEG(Moving Picture Expert Group)のコアメンバーとして,ディジタル放送やDVDに広く適用されているMPEG規格(ITU勧告H.262他)の策定に大きく貢献されました。特に,動きベクトル効率探索方式」を発明し,これはMPEG標準規格を実現する上での必須技術となっています。平成9年からはビデオオンデマンド技術等の標準を策定するDAVICの運営委員会メンバとして画像関連の数々の技術開発に大きく貢献しました。また,情報通信審議会情報通信技術分科会ITU−T部会,同研究開発戦略委員会,インターネット利用高度化委員会,研究開発・標準化戦略委員会等,総務省情報通信審議会配下の多くの委員会や標準化関連委員会へ参画し,国際規格のTTC標準への反映に貢献しました。これらの業績により同君は平成11年に日本ITU協会賞,平成20年に情報通信技術委員会総務大臣賞を受賞されています。
 その後WDMや10-100Gbpsなどの光通信システムの早期実用化,第三世代以降の携帯電話の実用化,次世代ネットワークなど,通信分野全体についての研究推進に尽力されるとともに,近年は環境問題などを含めた次世代ICTのあり方について幅広く活動されています。このような永年にわたるディジタル信号処理技術関連の研究開発における貢献と功績に対して,本会,ならびにIEEEからフェローの称号を授与されています。
 また学会活動においては,会計理事として学会収支の抜本的改善のため論文誌の電子化やソサイエティの独立採算化推進に貢献されるとともに,図書館の電子閲覧制度を進められました。さらに企画調査理事としてはフェロー制度の運用開始に尽力されました。その後,副会長,および会長を歴任され,学会Webシステムの再構築や国際化推進,ならびに省庁連携の強化や支部組織の活性化推進など,ICT分野における研究開発の推進のみならず,学会運営の活性化に多大な貢献をなされました。
 以上のように,本会,ならびに国内外の関連学会や標準化団体における活動による電子情報通信技術の発展に寄与された功績は極めて顕著であり,本会の名誉員として推薦いたします。

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