名誉員 推薦の辞
白鳥 則郎
  白鳥則郎君は, 昭和52年に東北大学大学院工学研究科博士課程を修了され, 同大学電気通信研究所に助手として勤務されました. 昭和59年に同大学電気通信研究所助教授, 平成2年, 同大学工学部情報工学科教授を経て平成5年, 同大学電気通信研究所教授に就任されました. 平成22年に東北大学名誉教授・同大学電気通信研究所客員教授, 公立はこだて未来大学理事,平成24年4月から早稲田大学大学院情報通信研究科教授となり現在に至っております.
 研究に関して同君は, 情報と通信に関する分野に取り組み, 4つの研究、即ち情報通信システムの「知識型設計開発支援システム」, 「やわらかいネットワーク」、人とコンピュータの調和および人の暮らしと自然の共生へ向けた「共生コンピューティング」、さらに災害に強い「ネバー・ダイ・ネットワーク」を推進し, それぞれの分野を先導し切り拓いたパイオニアです.
 特に, 通信と人工知能を統合した「知識型設計方法論」を提唱し, 情報ネットワークのプロトコルからアプリケーションサービスまでの設計過程を系統的に支援できることを実証しました. その成果は, IEEE JSAC「特集:通信網におけるAI」(1988年)の15編の論文中の3編の論文として採択され, 同分野を先導するパイオニアの研究として世界的に高く評価されています.
 また1994年に, ネットワークの内部と外部の変化に能動的に対応できる「やわらかいネットワーク」の概念を提唱し, 従来のネットワークアーキテクチャに「やわらかいネットワーク層」を導入して実装することにより、やわらかいネットワークの実現に成功しました. その後, このやわらかいネットワーク層は, ネットワークミドルウェアと呼ばれ, 世界的に定着し普及しております.
 1990年代初期に提案した「共生コンピューティング」の概念で, 人の暮らしと自然の共生へ向け, 省エネルギーを目指した「グリーン指向」情報通信システムの研究を先導し, 2011年に広域分散型地域コミュニティにおける実証実験(総務省・栗原グリーンプロジェクト)を成功に導いております.
 さらに2003年に「ネバー・ダイ・ネットワーク」の概念を提唱し, 2011年の東日本大震災以降に盛んとなった災害に強い情報通信システムの先駆的な研究を推進, その独創性・先見性は内外から高く評価されています.
 同君はまた, 総務省などの受託研究として多くの産学連携プロジェクトを先導し, 特に次世代ネットワーク管理に関する研究成果を発展させ, インターネットの標準化を扱っているIETFに提案し, 2件の国際標準化に成功しております.
 本会では, 情報ネットワーク研究会委員長, 人工知能と知識処理研究会委員長, 通信ソフトウェア研究会委員長, 評議員, 東北支部長などを歴任され, 学会の活性化と運営に尽力されました. さらに情報処理学会会長,IFIP日本代表, IEEE Sendai Section Chair, 日本学術会議連携会員, 人工知能学会理事として, 情報の分野においても学術の発展に大きな貢献をされております.
 これらの業績に対して, これまで本会から論文賞, 業績賞, 功績賞, フェロー等の各賞を, また文部科学大臣表彰, IEEEフェロー,情報処理学会フェロー,同学会論文賞・功績賞, テレコムシステム技術賞等, 数多くの賞を受賞されております.
 以上, 本会並びに国内外の関連学会における活動による電子情報通信技術の発展に寄与された功績は極めて顕著であり, ここに本会の名誉会員として推薦致します.

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