論文賞 推薦の辞
Image Recovery by Decomposition with Component-Wise Regularization
小野 峻佑 ・ 宮田 高道 ・ 山田  功 ・ 山岡 克式
(英文論文誌A 平成24年12月号掲載)

小野 峻佑

宮田 高道

山田 功

山岡 克式
 雑音,ぼけ,画素欠落等によって劣化した観測画像から原画像を推定する問題は画像復元問題と呼ばれ,ディジタルカメラ画像処理,医用画像処理,天体画像処理,リモートセンシング等の広範な応用分野で不可欠な課題となっている.近年,原画像に関する様々な先験的特徴を画像復元に柔軟に活用するために,必ずしも微分可能でない凸関数の最適化問題を解法指針とするアプローチが注目されている.最適解として良好な復元画像を獲得するには,観測画像に対する整合性を評価する凸関数とともに,各々の先験的特徴に対する整合性を評価する凸関数(正則化項と総称される)を周到に設計し,これらの総和を最小化するアルゴリズムを実現することが肝要である.ところが,従来提案されてきた画像復元法の多くは,画像全体の平滑化を促進させる正則化項(例:画素値の全変動量)を採用してきたため,本来滑らかでない精細情報の復元性能が犠牲になっていた.
 本論文では,従来法の弱点を解消するために,まず,画像を特徴的な3成分(滑らかな成分,エッジ成分,テクスチャ成分)の線形和としてモデル化し,3成分の組を画像の直積空間のベクトルとして表現するアイデアを示している.次に全変動量と2 種類のフレーム変換係数の絶対値和を用いて「各成分の先験的特徴との整合性」と「3成分の和と観測画像の間の整合性」を同時に促進する目的関数を設計し,「3成分の推定問題」を直積空間上の凸最適化問題に帰着させることに成功している.更に,この最適化問題が交互方向乗数法(ADMM)を用いて解決できることを明らかにしている.
 数値実験結果は,ぼけ除去や圧縮センシング等の問題設定において,提案法が「滑らかな成分の平滑化と精細な成分の高精度復元の両立」を達成し,従来法に比べ,復元性能を大きく向上させていることを示している.
 以上のように,本論文は,斬新な発想で優れた画像復元法を実現している.いずれの議論も極めて明快であり,本会論文賞にふさわしい論文として高く評価できる.

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