功績賞 推薦の辞
安藤 真
 安藤 真君は,昭和54年に東京工業大学大学院博士課程を修了され,同年日本電信電話公社(NTT)に入社されました.横須賀電気通信研究所に勤務された後,昭和57年に東京工業大学工学部電子物理工学科助手となられました.昭和60年に同電子物理工学科助教授,昭和62年に同電気電子工学科助教授,平成7年に同電気電子工学科教授,平成12年に同大学院理工学研究科電気電子工学専攻教授となられ,現在に至っております.
 同君は日本電信電話公社横須賀電気通信研究所並びに東京工業大学において,長年にわたり,最先端のアンテナ・電波伝搬・電磁界理論の研究に積極的に取り組まれ,多くの顕著な功績を上げられ,また学生の指導・育成に取り組まれ,多くの優れた卒業生を社会に送り出しました.具体的には,まず電磁界理論の研究を推進し,回折現象の解明,反射鏡アンテナの設計に新しい手法と解釈を与えるなど,高周波回折理論の確立に先駆的役割を果たしました.続いて,アンテナ・伝搬の分野で,高能率平面アンテナの開発を推し進め,国際的にも新しい工学分野を確立しました.特に,先進的なラジアルラインスロットアンテナの研究から実用化に至るまで多くの業績を上げられ,その成果は衛星放送受信用アンテナ,プロセス用プラズマ励振アンテナ,惑星探査衛星「あかつき」「はやぶさ2」搭載データ伝送アンテナとして多くの分野で実用に供され,この分野の発展に大きく貢献しました.また後進の指導育成に努めるとともに,現在においても我が国のミリ波無線通信の推進とその普及に主導的役割を担っております.
 同君の功績は電波科学・電波工学全体の広範に及び,総務省情報通信審議会専門委員,経済産業省総合資源エネルギー調査会臨時委員,日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員(電気・電子工学)を務めるなど国の電波行政や学術創成にも多大な貢献をなされるとともに,IEEE Antennas and Propagation SocietyのPresidentや国際電波科学連合(URSI)のCommission B委員長,更にURSIの副会長など,国際的な学術団体の要職を務めるなど,この分野における日本及びアジアの国際的貢献を世界に示しました.本会においては,研究専門委員会委員長,編集特別幹事,エレクトロニクスソサイエティ会長,本会副会長として,ソサイエティをまたぐ活動で本会の発展に貢献しました.特に本会のアンテナ伝搬ワークショップシリーズやアジア地域の基幹会議に発展したアンテナ・伝搬国際会議(ISAP:International Symposium on Antennas and Propagation)など,多くの学術会議事業の企画・運営に独創的な発想で取り組み,その立ち上げ・定着化に中核的な役割を果たしました.
 これらの業績により同君は本会学術奨励賞・論文賞・業績賞,電気通信普及財団賞,井上学術賞,電波功績賞大臣表彰,情報化促進貢献総務大臣表彰などを受賞されました.また本会並びにIEEEからフェローの称号を授与されています.
 以上のように,同君のアンテナ・電波伝搬・電磁界理論分野をはじめとする電子情報通信分野の発展への貢献は極めて顕著であり,本会の功績賞を贈呈するにふさわしい方であると確信致します.

CLOSE