SWIM研究会第一回ワークショップ議事録
【主催】ソフトウェアインタプライズモデリング(SWIM)研究会
(SWIM:Software Interprise Modeling)
URL:http://www.ieice.org/iss/swim/jpn/
電子情報通信学会 情報システムソサイエティ 第一種研究専門委員会
委員長 龍谷大学 新川芳行
副委員長 綜研テクニックス 松田順
幹事 情報通信総合研究所 岩田祐一
幹事 宮城大学 宮西洋太郎
幹事補佐 三菱電機情報ネットワーク 久保田雅彦
幹事補佐 NTTコミュニケーションズ 堀米明
プログラム委員長 東海大学 片岡 信弘
プログラム委員会 NTTソフトウエア 林 章宏
NEC 日熊 政行
NTTコミュニケーションズ 堀米 明
NEC通信システム 藤田 浩司
査読委員長 宮城大学 宮西 洋太郎
【日時】2005年11月18日(水)午後
【場所】東京都千代田区一ツ橋2-6-2 日本教育会館 807
【基本テーマ ビジネスモデル
Si業界での最上流を強くし、国際競争力をつけることを目的とする】
【議題】
1.SWIM2005-14 ソフトウエア開発プロジェクトにおける予測型リスク管理手法の提案
林 章宏(NTTソフトウエア)
2.SWIM2005-15 ソフトウエア開発における情報処理の多面性
犬塚 篤(北陸先端大)
3. SWIM2005-16 [特別講演]日本の情報サービス産業における価値創造の展望
田村 拓(CSKホールディングス)
4. SWIM2005-17 顧客ニーズを考慮した顧客数変動予測モデルに関する一考察
−日本の携帯電話市場を題材として−
吉田 賢哉(日本総研/東工大)、新保 豊(日本総研)
5. モジュール化に適合する分業調整方式と情報技術の役割
川端 勇樹(HRS)
6. SWIM2005-19 ビジネス・プロセス・アウトソーシングに関するビジネスモデルについての一考察
堀米 明(NTTコミュニケーションズ)
【質疑】
1.SWIM2005-14 ソフトウエア開発プロジェクトにおける予測型リスク管理手法の提案
林 章宏(NTTソフトウエア)
(宮城大学 宮西)本研究によりソフトウエア開発プロジェクトにおける予測型リスク管理手法の枠組みが整理された。火の見台帳の中身(見落としていたリスク)を集約し、ナレッジデータベース化することが大事である。本枠組みの導入によって、プロジェクト管理が過剰になるのでは?
(発表者) 起こり得ないリスクを含める必要はなく、予防のためのコストは少ない方が良いであろう。費用対効果の観点は今後の課題とする。
(宮城大学 宮西)定量的リスク分析も取り入れた方がよい。
(発表者) ハードウエアの開発プロジェクトでなく、ソフトウエアの開発プロジェクトを対象としている。後者では、定量的リスク分析が旨くいかなかったので取り入れなかった。
(宮城大学 宮西)定量的リスク分析がうまくいくかどうかは当事者のスキルに依る。
データがあれば確率分布が求まるので、ナレッジデータベースに蓄積していけば実効性はあがると考える。
(内田洋行 坪井)ソフトウエア開発プロジェクトのリスク管理は我々もやりたかったが、できていない。
本日の発表は有益だった。リスク管理はベストプラクティスをきちんと導入しているところでは有効だが、でたらめなところでは有効でない。はじめからトラブルことが自明なプロジェクトではうまくいかない。PMOの指摘は定性的な内容になりがち。数字的に指摘できるなら説得力がある。PMOはInfosys(インド)が導入している。
(東海大学 片岡)火の見櫓の人材を育成する方法は?(ベテランに託すか?)
(発表者) 優秀な人材を引き抜くことには抵抗がある。そこで、品質保証部の人材に経験させることでクリアしている。
(東海大学 片岡)トラブルようなプロジェクトは最初から見えている場合がある。しかし、上位管理者が理解しないことが多い。そのような場合、この手法を用いれば定量的に理解させることができるか?
(発表者) その通り、この手法を用いれば上位管理者に定量的に理解させることができる。
2.SWIM2005-15 ソフトウエア開発における情報処理の多面性
犬塚 篤(北陸先端大)
(宮城大学 宮西)「物理性」についてのコンセンサスは難しいのでは?
(発表者) 「多義性」は理解しやすいが、確かに縦軸の「物理性」は理解が難しい。直接手に触れる事のできる程度、あるいはバーチャルか非バーチャルか、といった意味合いと考える。
(宮城大学 宮西)ソフトウエア開発では、どのように考えればよいか?
(発表者) 「物理性」とはメディアに埋め込まれた性質を意味するので、技術的情報の程度と考えられないか?
(龍谷大学 新川)「図6.キャリアによる変化」はソフトウエア工学におけるV字モデルを想起させる。
(NEC 日熊)「図6.キャリアによる変化」の解釈を下記の如く提案する。
新人に設計情報を理解させるためには、具体性の高い情報を必要とする。ベテランになれば抽象度の高い情報でも理解できる。上級管理職となると逆に、設計の現場から遠ざかるため目に見える具体性がないと理解できなくなる。
(発表者) その解釈は自分が思っていた事に近い。「物理性」と「多義性」を厳密に定義するためには、この図の意味づけが問題になる。
(NTTコミュニケーションズ 堀米)Kクラスのマネージメントは抽象概念ではなく、具象でないと通じなくなるのではないかと考える。
(内田洋行 坪井)内田洋行はソフトウエア開発だけでなく机や椅子も創っている会社だが、お客様が感じることとC級以下のプログラマが感じることとが「物理性」に顕れるとしたら、すばらしいことだ。実際、家具のデザイナはお客様が感じる物を図に表すとすぐにプロトタイプに入る。これは管理職が感じることに近いかもしれない。
3. SWIM2005-16 [特別講演]日本の情報サービス産業における価値創造の展望
田村 拓(CSKホールディングス)
(宮城大学 宮西)田村様は社会貢献やビジネスなど非常に多方面の取り組みをされていることがよくわかった。
(東海大学 片岡)私の研究室の学生はSI業を含むソフトウエア関係企業に就職する者が多い。彼らが生き残るには今後どうすれば良いか?
(発表者) 個人的意見だが、スクラッチ型開発を主としていたソフトウエア産業にパッケージ型ビジネスが入ってきて、ソフトウエアの作り方が変化した。医療現場でもMRIのような器具の導入にとどまらず、会計までIT化されるようになった。JISAでも活動しているが、世の中であらゆるものがIT化されてくる。従い、仕事の場は無尽蔵にあり、魅力のある職業であることに変わりはない。しかし、安価な会計システムがヨドバシカメラで売られるようになり、手作りのビジネスを行う者にビジネスモデルの変革を迫っている。
(宮城大学 宮西)会社や業務としてのサバイバルでなく、学生の魅力度、情報産業の職種としての魅力度や社会的地位の向上は、どのように成りますか?
(発表者) 悪いニュースと良いニュース、それぞれを紹介する。悪いニュース:情報学の方たちとの会話の中で伺った話だが、主要大学の学長で情報工学出身者の人数が過去最高となったとのこと。今後は下り坂に成る兆候かもしれない。良いニュース:ITを必要とする場は増加している。革新領域は使い方や上流フェーズに限られてきているわけではない。例えば、モバイルマーケッティングのすばらしい話を紹介すると、ユビキタスを使って、ものすごいスピードでデータをマイニングするアルゴリズムが求められている。また、別の例を紹介すると、基幹システムが7月1日切り替えなので無休で働かなければならない。このような場合に、顧客の要求を瞬時にマイグレーションさせる技術が実現できればすばらしい。類似の場面は多いだろう。このようにチャレンジングなテーマはまだまだ多い。
(NTTソフトウエア 林)「ITバズワードvs不良資産」のスライドで内部統制のコンサルティングの話をされた中で、「可視化するために最適なプロセスを考えるようになり、可視化がゴールになっているように見えるケースもある。」と言われたが、私たちは可視化しやすいプロセスを考えるというコンサルティングに抵抗している。
(発表者) 法令違反しない管理=コンプライアンス、社会規範に違反しない管理=CSR、日本版SOX法の動きに見られる如く企業を如何に良くするかが内部統制の目的である。可視化が目的のようになるのはおかしい。
4. SWIM2005-17 顧客ニーズを考慮した顧客数変動予測モデルに関する一考察
−日本の携帯電話市場を題材として−
吉田 賢哉(日本総研/東工大)、新保 豊(日本総研)
(東海大学 片岡)普及がサチュレーションしている状況は、モデルにどのように組み込まれているか?
(発表者) サチュレーションしているのでモデルがシンプルになる。
(宮城大学 宮西)サチュレーションした状態には両方ある?
(発表者) 解約と新規に単純化している。解約を80万加入〜100万加入、新規加入を20万加入〜30万加入としている。
(東海大学 片岡)新規加入は、どのくらいの成長率で伸びるか、基礎データはあるか?
(発表者) 丸めている。Mobile Number Portability (MNP)制度導入も考慮し、一定の値とした。可変もできるが、今回のモデルには組み込んでいない。
(宮城大学 宮西)解約率と選択率を仮定の下に議論しているが、それらの値の予測も意味があるのでは?
(発表者) 事業者から見れば予測が必要である。本論文ではアンケートを用いる方法で予測を試みている。しかし、要因が多いので部分的予測にとどまっている。
(宮城大学 宮西)そのような要素を取り入れたダイナミックな予測手法は考えられないか?
(発表者) 今回のモデルでは、解約率と選択率を与件とすることでシミュレーションを単純化した。また、与件とした解約率と選択率の予測はアンケート手法を使って解決する考えを採用した。この与件としたパラメータを決めるメカニズムが解明されれば、もっと面白い展開ができるかもしれない。
5. モジュール化に適合する分業調整方式と情報技術の役割
川端 勇樹(HRS)
(プラットイーズ 矢本)モジュール化はイノベーションが要求されるところよりも、成熟化された分野で要求されるのではないか?(イノベーションが起こる分野ではインテグレートが進み、成熟化した分野ではクローズされた状態でモジュール化が進むのではないか。静的ビジネスアーキテクチャでも、そのように分けられている。
(発表者) 同感だが、PC分野では先にモジュール化があるので、本論の分野も成立する。
(九州産業大学 松本)製品にはハードウエアとソフトウエアがある。本論は両方を製品と見ているか
(発表者) 製品としてはハードウエアを扱うが、ソフトウエアもあると思う。
(九州産業大学 松本)本論ではハードウエアを主体に扱っているか?
(発表者) Yes、今日の話はハードウエア製品に関して述べた。しかし、ソフトウエアについても適用できるはず。
(九州産業大学 松本)本論は議論百出の話である。また、プロダクトイノベーションにおける組織のありかた:プロダクトイノベーションにおける組織のあり方は、ハードウエアとソフトウエアとでは大きく甚だしく異なる。
(芝浦工大 長島)モジュール化が進行する場面では知識は特許に集約されてくるが、イノベーションが進行する場面では出てこない。また、モジュール化の議論では部分最適よりも全体最適が難しい。モジュール化のところでの情報技術の役割がどのように係わってくると考えるか?
(発表者) そのキーは、明示的な情報共有にある。開発を行う場合のコミュニケーションは、対面や紙よりもネットワークで見る方が明らかな情報であると考える。
6. SWIM2005-19 ビジネス・プロセス・アウトソーシングに関するビジネスモデルについての一考察
堀米 明(NTTコミュニケーションズ)
(日本総研 吉田)本論では、ISIPの差別化要因としてビリングを取り上げている。これは参入を狙う者にとって克服が難しいものか?
(発表者) ビリングはISIPに必須の機能であり、キラーアプリであると考えている。当社は既にビリングの仕組みを先行して保持しているので競争上優位である。
(宮城大学 宮西)そういう意味では、貴社の社内発表としては重要だと思う。しかし離れて考えると、他の会社が参入して成功する要因は何か?他の会社の参入は本当に難しいのか。
(NEC 日熊)ビリングの仕組みに使用するコンポーネントを供給するベンダが存在し、このベンダから供給を受ければビリングの仕組みは構築できる。しかし、信頼性の高い性能を実現するためにはノウハウがあり、ある程度の参入障壁になりうると考える。
以上