2004年度SWIM第一回研究会議事メモ

1.片岡委員長挨拶

1)SWIM研究会は年3回開催していまるが、次回研究会は10月16日(土曜日)に開催します。

 これは、日頃仕事のために出席困難な方のための試みです。是非多数の方に参加願いたい。

2)SWIM研究会のテーマは、「インターネット時代のビジネスモデルの研究」です。

 企業/非企業、NPOを含めて考えます。

 企業やシステムのモデリングによって、「日本のソフトウエア産業の国際競争力をいかに強くするか」がテーマです。オフショア(インドと中国中心)が増加していることに対して日本のソフト産業はどうなるか。このような日本の現状を考えると、国際競争力を強化しなければならないことがわかる。

SWIM研究会としても貢献していきたい。

3)2003年度優秀論文賞表彰

 2003年度優秀論文賞として記念品を犬塚様に贈呈し表彰しました。

 表彰論文は下記です。

 第1回研究会3.「知識のフローとストック」犬塚篤(北陸先端科学技術大学院大学)


2.質疑

SWIM2004-1 基調講演 Eビジネスを支えるセキュリティ技術の動向

    佐々木良一(東京電機大学)

(松田)コスト計画は、どのような方法で実施されていますか?

(講演者)積み上げ方式で行い、運用コストや損害リスクも考慮し、将来コストの現在価値への割引率も考慮します。荒っぽいが、方向性を出すには、これで十分です。

(堀米)ヒステリシス署名の原理について説明してください。

(講演者)一つ前の署名を次の署名に組み込んでハッシュ関数値を計算することで、署名の有効期限切れの問題を解決する署名方式です。

(片岡)実用化はまだですが、量子コンピュータが実用化されると127bitの暗号も簡単に解読できるといわれています。そうすると、持つものと持たざるものとの差異が顕著になります。この不平等問題にどのように対処すべきでしょうか?

(講演者)量子コンピュータは、素因数分解問題は解けると言われています。しかし、ハッシュ関数ならば対処可能です。ハッシュ関数と言えども、不平等問題は残りますので、防止対策に動き出したところです。

(松本)防止技術と解読技術のイタチゴッコは続くのだと思います。

   セキュリティ技術の国際競争力はイスラエルが強いですが、日本の優位性はありますか?

(講演者)暗号技術の基本部分ではイスラエルが強いのですが、日本も周辺技術では競争できる実力を待っています。日本は頑張らねばなりません。


SWIM2004-2  エージェントベースシミュレーションを利用した市民活動継続要因の考察

    中島聡子(特定非営利活動法人NPOサポートセンタ)

(犬塚)エージェントベースシミュレーションは何か既製のツールを使用されましたか、また、パラメータは自分で決めましたか?

(発表者)自分でC++を使用して作成し、時間で推移するモデルを自分で作成しました。

(犬塚)エージェントベースのパラメータの変化によって結果が変動するかどうか確かめてみましたか?

(発表者)今回のモデルは大小関係だけを用いたが、パラメータを変えても結果はだいたい同じでした。

(中井さん)センシティの検討は客観性を評価するうえで重要です。定量的には現れない変化を議論することや、安定か不安定かを議論することが大事です。


SWIM2004-3  QFDを用いたソフトウエアプロセス改善領域の識別手法の提案

    林章浩(NTTソフトウエア)

(古宮先生)一つ、QFDは人によって結果が異なります。

     要求品質は本質特性ではなく、代用特性です。

     点数の付け方は人によって変わります。

     AHPは主観的なやりかたです。人の感性に依存し、セマンティックスが不明です。因果関係がはっきりしません。結果として説得力が弱くなります。

     二つ、標準化、例えば他のISOとの関係やPINBOCとの関係を今後どのようにされますか?特に、PINBOCのスコープマネジメントは、お客との関連でプロセス評価を扱います。例えば契約の内容が変化したとき客本位で押しつけられることを認めます。

(発表者)要求品質が本質特性ではなく代用特性であるとの指摘は、その通りです。

WG10で議論された結果できたものなので採用している。逆に言えば、他に方法はないので。

顧客との利害関係の明確化や客観性の追求については、今後改善します。

現在悩んでいる重い問題です。

(松本先生)林さんは、過去の発表でも、いつも指摘に対しごもっともと答えます。しかし、この手の活動は理想論では旨くいきません。むしろボロクサイものの方が旨くやれると思います。理論的にすばらしいものは役に立たないことがあります。

スコープマネージメントと顧客オリエンテッドなプロセス改善はバッティングしますか?

(発表者)スコープマネージメントと顧客オリエンテッドなプロセス改善はバッティングしません。双方を排他的に扱う必要はないと考えます。

(古宮先生)松本先生の指摘はもっともだと思います。しかし、スコープマネジメントは顧客の要求をどんなものでもすべて受け入れることを求めます。これではメーカの改善努力を阻害しかねません。ですから、スコープマネージメントは排除すべきだと考えます。


SWIM2004-4 貿易金融電子化の現状と今後の方向性

    水谷伸(UFJ銀行)

(松本先生)質問1:貿易金融電子化の中でルールに沿う部分(正常な状態)は、当事者間のプロセスを旨く決めることが大事ですが、例外事項はどのように処理していますか。たとえば、代金の入金指示に従って支払い手続きを済ませたが、現物が何らかの事故・事件により届かなかった等の事態が発生した場合はどのように考えているのですか。

    質問2:今後の方向性で「G−Bank」プロセスがありますが、GからBankに情報がでますか。

(発表者)質問1に対して:例えば、送金ベース決済において、船積みした後の障害に対してはサービス提供側で解決します。その方法はネットワーク側でプロトコルを定義して管理する方法です。逆に、船積み前の障害は当事者間での対処が必要です。基本的には荷主との間で処理することになりますそれ以外の事態に対して対処する方法は課題です。

     質問2に対して:BからGに問い合わせた事項のみ回答が帰りますが、自発的にGから情報がでることはありません。例えば、税関における関税徴収で引き落としに対する回答は貰えます。このようにBからGへの働きかけに対する回答はありますが、受諾か修正か拒否の区別情報だけになります。これだけでは米国政府のセキュリティ規制対応に不足します。

セキュリティ規制対応については米国政府から日本政府に対する規制枠組み強化の圧力がかかっており、この情報をGからBへフィードバックするよう提言中です。港湾のオペレーションや物流に関する情報は来ません。入手できるようにためには、現行では法律の改正が必要です。

         基本的に税関関係の規制法規は明治以来変わっていないのが現状です



SWIM2004-5 アジア圏における貿易金融EDIビジネスモデルと日本の貿易電子化の将来像

    野地邦夫・堀米明(NTTコミュニケーションズ)

(妹尾先生)香港や韓国では電子通関のオープン化が進行しているとのことで、その目的とする国家の競争力強化に結実していますか。

(発表者)直接的な評価は困難ですが、閉じたシステムでは旨くいかなくなることが自明です。インターネットベースでのオープンな環境でないと駄目で。仮に韓国が独自で構築してもやっていけません自国だけ最適化しても中国のWTO加盟に伴う国際自由貿易圏の広がりに勝てません。

(妹尾先生)標準化については企業の立場と国の立場では違いますか。

(発表者)日本は、大手企業は自社関連の海外子会社、関連会社間をクローズドでやってきていました。韓国は企業と政府が一体化して進めています標準化に関して企業の立場と国の立場は異なります。国は取引のスポット化の防止を目的とし、企業は流通業者の新規参入防止を目的とします。差別化の面ではKTNETと政府が一体となっていますが、差別化と標準化はトレードオフの関係になります。


SWIM2004-6 船荷証券の電子化における二つのビジネスモデルの比較研究

    菅野照高・田部井勝・堀米明(NTTコミュニケーションズ)

(氏名不詳)貿易制度としてBolero規約は良くできていると感心しました。

(犬塚さん)Boleroは有形物の取引を対象とするが、無形物の貿易はフォローされていますか。

(発表者)有形物の取引に限定されています。

(松本先生)成功要因の比較において定性的な比較項目を挙げてBoleroが有利と結論していますが、それが本当に成功要因でしょうか。他の要因は考えられないのでしょうマイクロソフトの例のように結果的にユーザー数を多く獲得したことが成功要因ではないのです成功要因の1,2はどのように決めた(選択)したのか、また○、△の判断基準は何か、比較で勝手に付けたのです

(発表者)あくまで2つの方法の比較として、現在の利用状況等の比較で決めました。我々の研究では、ここであげた事項が成功要因であるとの結論に至りました。選定した成功要因が当ビジネスモデルのグローバル性を進め、結果的にユーザー数の増大に繋がったと思います。現在のところ、Boleroの方が普及しています。


SWIM2004-7 既存企業のイノベーション対応に関する一考察

    −音楽産業におけるバリュー・ネットワークの検討−

    木佐貫奈央・妹尾大(東工大)

(片岡先生)おもしろい提案です。アメリカの既存のプロバイダや対抗するソニーのサイトがあります。それらに対抗するメリットは何でしょうか。

(発表者)アップルはipodを販売して利潤をあげるビジネスモデルです。レコード会社には真似できないモデルです。この発表のモデルならば採用できるはずです。

(古宮先生)研究の方法論として、有効性をどのように説明しますか。その方法は考えていますか。

(発表者)ご指摘のとおりです。今後検討します。

(古宮先生)音楽電池の発想は、バウチャに似ていて面白いと思います。


SWIM2004-8 【電子情報通信学会2004年総合大会パネル報告】

    −モデリングとエンジニアの質・育成−

    岩田祐一(情報通信総研)

(古宮先生)ソフトウエアエンジニアリング方法論評価以前に、日欧の商習慣の違いについてコメントしておきたい。

1)日本は、発注側は何も知らずに要求するだけして失敗しても責任を問われることがない。

それに対して欧米は、発注側もプロジェクトが失敗すれば責任を問われるので失敗することが少ない。

2)日本のメーカにおいて、技術者をマネージャが対応に評価していないので技術者が育たない。

(発表者)1)について、日本は客とSEがべったりつかなければ習慣があるので客の責任は問われなかった。

2)について、論文に書けていなかったが、西岡氏の話の中で、できる人とできない人の違いに関し言及がありました。「できる人(評価される人)が入って作れるシステムがある。実際の場面で、この認識が変化しないとSE育成面も変化しない。」

今後、議論していきたい。

(古宮先生)二点指摘

1)アーキテクトが重要です。アーキテクトを高く評価し、マネージャを支えることができるように分業化すべきです。

2)顧客とSEのスキル面や文化面のミスマッチの埋め方を工夫すべきです。

(片岡先生)モデリング技術論の観点では、経営者の欲するシステムが作れているでしょうか。モデリング技術には、経営者・管理者・技術者の三階層が各々正しく理解できる工夫が必要です。