研究室めぐり

大阪大学大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻 創発ロボット領域

鈴木 昭二  浅田 稔(大阪大学大学院)

大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻創発ロボット領域(浅田研究室)では、知能を持つロボットを研究しています。特に、実環境に適応したロボットのタスク遂行能力の実現を目指し、ロボットが自らの経験を通じてタスク遂行に必要な行動を獲得するための枠組みを扱っています。ここでは、ロボットの持っている機構および機能、ロボットと環境の相互作用、およびそこから創発されるロボットの行動との関係を明らかにする試みがなされています。現在は、強化学習、遺伝的手法、適応型視覚フィードバック等の手法を用い、単数及び複数の移動ロボットによるサッカーを題材にしたさまざまな行動獲得の実現や多自由度ロボットの外界センサを利用した適応的な制御の実現等を研究しています。
サッカーを題材にした研究は、図1に示すようなカメラを搭載した車輪型の移動ロボットを用い、これまでは主に強化学習の一手法であるQ学習を適用した単体のロボットによるシュート行動の獲得を実現してきました。
現在は、より多様な行動の獲得を目指し、(1)より高機能の視覚を持つロボットの行動学習、(2)複数のロボットの協調・競合行動の学習、(3)教示による行動学習の効率化等の問題を扱っています。高機能の視覚を持つロボットとして、可動式のカメラを搭載したロボット(図2)や全方位視覚を搭載したロボット(図3)を製作し、シュート行動やゴール守備行動の学習を試みています。
複数ロボットの協調・競合行動の学習のためには、各ロボットは自分以外の味方や敵ロボットの行動に応じて行動を変えていく必要があります。そのための手法として、状態推定法による他のロボットの行動推定を含んだロボットによる自律的な状態空間の構成方法や、遺伝的プログラミングを応用した協調行動の学習を提案しています。また、教示に関しては学習するロボットが教示されたデータを自律的に検証し利用する方法について研究しています。
以上の研究成果を検証するためにロボカップと呼ばれるロボットサッカー国際大会の中型ロボット部門に参加しています。この部門は45cm四方以下の大きさの自律的なロボット5台を1チームとして対戦を行います。図4はロボカップの試合の一場面です。
サッカーをするロボットは車輪型の移動ロボットであるために機構が比較的単純で制御しやすい半面、適応できる環境は水平面上に限られています。ロボットが不整地等のより複雑な環境に適応するためには、脚などの多自由度の機構が必要となります。本研究室では、図5に示すような4脚の脚式移動ロボットのプラットホームを用い、その制御方法についての研究も行っています。このロボットは1脚あたり3自由度、合計12自由度間を有しています。
特徴的なテーマとして、反射的な行動の組み合わせによりロボットの歩行を誘導する手法を提案しています。ロボットに視覚目標を追従するための揺動と転倒回避のための脚の踏み換えを組み込み、これらの行動がロボットのおかれた環境に応じて適宜組み合わされて実行されることにより結果的にロボットが歩行することを目指しています。この手法は外界センサを利用した反射的な行動に基づいてロボットを歩行させるため、従来の運脚パターンを予め計画し与える歩行に比べて不整地に適応しやすいという特徴を持っています。
その他の多自由度ロボットとしては、人間の腕や手を模したロボットであるマニピュレータとハンドを扱っています。これらの制御には、視覚情報を取り入れたサーボ制御である視覚サーボ、特にセンサ系のキャリブレーションをオンラインで行う適用型視覚サーボを用い環境とタスクに適した自由度の利用方法を研究しています。具体的には、視覚サーボによるマニピュレータの障害物回避および移動体追跡。ハンドの視覚誘導による力覚とのハイブリッド制御による物体の操り等を研究しています。
研究の詳細および関連文献は以下のURLより入手することができます。
http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/