DEWS2003論文集刊行にあたって

ワークショップ委員長: 吉川正俊(名古屋大学)
プログラム委員長:   横田治夫(東京工業大学)


電子情報通信学会データ工学ワークショップ(DEWS)は、データ工学に関する様々 な研究テーマを対象に、若手研究者を中心に毎年春に各地で開催され、夏のデー タベースワークショップとともに、日本のデータ工学・データベース分野の中 心的なワークショップとなっています。14回目を迎える今回は、石川県加賀市 片山津で開催し、過去最多の270名を超える参加者を得て、大変な盛会のワー クショップとなりました。参加者の大幅な増加は、日本のデータ工学の将来を 支える若手の活発な活動を示しており、大変喜ばしいことと思います。なお、 今回のワークショップは、2002年5月に設立された日本データベース学会が主 催に加わり、第1回日本データベース学会年次大会も兼ねることになりました。

論文投稿には、これまでのDEWSと同様に、フルペーパーとエクステンディド・ アブストラクトの2つのカテゴリを用意しました。また、今回は、日本から世 界に向けての研究発信を目指して、英語セッションを設けることにしました。 従来からも英語の発表はありましたが、より積極的に若手の英語での発表の機 会を用意することを目的に、登録受付・査読処理も日本語と英語を分け、セッ ションとしても独立させることにしました。論文募集の結果、フルペーパーの 投稿が64件、エクステンディド・アブストラクトの投稿が84件、合計148件の DEWS始まって以来最多のご投稿を頂きました。この中には、英語セッションへ の8件の投稿も含まれます。日本語、英語とも、Webを用いた電子受付、電子投 稿を呼びかけた結果、紙での投稿はありませんでした。

投稿された全ての論文に対して、3名のプログラム委員による査読を行いまし た。各プログラム委員には、若手の育成を主眼に、内容改善の助言を多く含ん だ「温かい目での査読」をお願いし、有意義な改善提案を多数含んだ査読報告 を著者に返すことができました。また、昨年は査読結果により、long(30分9件)、 regular(20分72件)、poster(5分29件)の3種類に発表を分類していましたが、 今年はポスター発表をより積極的に取り入れることにしました。10分間の発表 と同じ会場内でのポスター前での20分〜30分程度の質疑説明を行うセッション を会期中全日1トラック分として行うこととし、一般発表は25分で統一するこ とにしました。これに伴い、各プログラム委員には、査読時に、論文のレベル ではなく、内容がポスターに向いているかどうかをご判断頂き、ポスター向き の論文の推薦を頂きました。この結果、ポスター発表の総計は58件、一般発表 は87件、合計145 件となり、ポスターセッションでは、ポスター向きの興味深 い発表で大変盛り上がりました。ポスターセッションを含めて、トラックを4 並列にしたのもこれまでのDEWSにはなかったことです。予想以上に投稿数が伸 び、急遽4並列にしたことから、和室であぐらで発表が聴講できるトラックが1 つできましたが、これもこれまでになかったことです。

投稿論文の発表の他に、招待講演としてメルボルン大学の Ramamohanarao Kotagiri 教授に Basyesian Approach to Use Emerging Patterns for Classification と題した講演をお願いしました。また、チュートリアル講演 では、富士通研究所の津田宏様に、「セマンティックWebは情報検索をどう変 えるか?」という講演を頂きました。また、DEWS2002優秀論文賞受賞者のお二 人には「大規模データ管理のためのストレージ技術に関する動向」と「半構造 データマイニングに関する研究動向」に関するミニサーベイをして頂きました。 さらに、電子情報通信学会フェロー受賞を記念して京都大学の上林弥彦先生に 講演を頂きました。この他、日本データベース学会の企画として、「ビジネス インテリジェンスへの期待と課題」というパネル討論と、長年DBJapan運営に 携われた岡山県立大学の横田一正先生の日本データベース学会功労賞受賞の表 彰式が行われました。さらに、(株)リコーが開発したプレゼンテーション Web コンテンツ自動作成ツール「MPMeister」を用いて、発表の様子をビデオ 撮影し、並列トラックのために聴講できなかった参加者のために会場でプレゼ ンテーション資料と同期した発表の様子を閲覧可能とすると同時に、そのコン テンツを日本データベース学会のアーカイブに格納して日本データベース学会 員が後で閲覧できるようにしました。つまり、発表した論文は、昨年同様、 ISSNを持つ正規の出版物として電子情報通信学会のホームページの下に置くと 同時に、発表の様子は日本データベース学会のホームページの下に置かれるこ とになりました。

ワークショップ後、プログラム委員会での審議により、フルペーパー投稿の中 から、優秀論文2件、最優秀論文1件を選定しました。これらの論文は、電子情 報通信学会和文論文誌DIの研究会推薦論文の対象となります。また、会場での アンケート結果をベースに、全投稿の中から2件の優秀プレゼンテーション賞 を選定しました。これとは別に、日本データベース学会では、座長推薦により、 DBSJレターを発行することになっています。

DEWS2003を通じて、データ工学研究の今後の進展に有益な様々な成果が得られ たと確信しております。また、そこでの最新の成果をこのような論文集として まとめられましたことは、本ワークショップをオーガナイズした者として喜び にたえません。本論文集が皆様方の今後の研究に役立つことを切に願っており ます。

最後になりますが、今回のワークショップ開催に際しまして大変多くの方々に ご支援、ご協力をいただきました。この場をお借りして御礼申上げます。ご多 忙のところ貴重なフェロー記念講演を頂いた上林弥彦先生、日本データベース 学会関連の企画を全てまとめられビデオ撮影も精力的に取りまとめられた日本 データベース学会副会長の増永良文先生、招待講演をアレンジ頂きました喜連 川優先生、招待講演を頂いた Rao Kotagiri 先生、チュートリアルをアレンジ 頂いた石川博先生、チュートリアルを頂いた津田宏様、パネリストの皆様、懇 親会において大変盛り上がった「若手にしゃべらせろ」を企画運営して頂いた 原隆浩先生、「若手にしゃべらせろ」に参加頂いた若手の皆様、ミニサーベイ をお引き受け頂いた合田和生様と浅井達哉様、ビデオ撮影にご協力頂いたボラ ンティア学生の皆様、そして大変な量の査読をお引き受け頂いたプログラム委 員の皆様、全ての方のお名前を挙げることはできませんが、本当にありがとう ございました。特に、財務担当および投稿・査読Webサイト管理の片山紀生先 生、ローカルアレンジメントの宮崎純先生には,ワークショップの準備と実施 に当たり多くの貴重な時間を割いて運営全般に渡って大変にご助力頂きました。 ここに、心より御礼申し上げます。さらに、ビデオ撮影に全面的に協力いただ いた(株)リコーの関係スタッフの皆様、バックアップを頂いたマイクロソフ トに感謝いたします。また、論文投稿を頂いた皆様、ならびに本論文集の編集 にご協力いただいた皆様に感謝いたします。


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