より身近な"通信ソサイエティ"をめざして

吉田 進 会長


Susumu YOSHIDA

 1. はじめに


 この度、井上友二前会長のあとを受けて、通信ソサイエティの会長に就任させて頂くことになりました。どうぞよろしくお願い致します。

 通信ソサイエティは会員数1万3000人余りを擁する電子情報通信学会の中で最大のソサイエティです。昨年度、他のソサイエティに先駆けて独立採算化の本格実施に踏み切り、本年度がその2年目となります。狙いはもちろんソサイエティ独自の施策を機動的に実施し、会員の皆さんへのサービス向上を図ることにあります。その流れを軌道に乗せ、皆様にとってより身近に感じて頂ける"通信ソサイエティ"をめざして、執行委員会メンバー一丸となってがんばりたいと思います。



 2. 最近の動きについて


 独立採算化の本格実施に伴い通信ソサイエティでは様々な新たな試みを行いつつあります。

 既に皆様ご承知の通り、独立採算化の目玉事業として、平成19年6月にカラフルな和文マガジンが創刊されました。今後年間4冊のペースで発行を続けます。

 この和文マガジンは高度な専門的な知識をより分かりやすく一般の会員にもお伝えするほか、著者の方に書き方を工夫して頂き、通信分野を志す学生、通信分野に近い企業の技術者の方が、少々専門が一致していなくても理解できる内容になっています。本マガジンを通してこれまで以上に多くの方々が通信ソサイエティに親しみを持って下さり、より深くかかわって下さることを期待しています。

 通信ソサイエティが誇る研究専門委員会活動ですが、本年度アドホックネットワーク研究会とユビキタス・センサネットワークの2研究専門委員会が新たに発足し、合わせて19の研究専門委員会が活発に活動しています。また、将来の発展につながる可能性のある萌芽的な研究分野を担当する時限研究専門委員会も含め、研究専門委員会の定量的な評価指標を通して更なる活性化をはかるべく、現在さまざまな試みが検討中です。

 また、上記以外にも、昨年から新たにソサイエティの論文賞が創設されました。コミュニティサービスの実施、ホームページのリンクサービスなど、もっと身近な存在に感じてもらえる通信ソサイエティをめざして様々な試みが行われつつあります。皆さんも一度通信ソサイエティのホームページをじっくりと探検してみませんか?きっと何か新しい発見があるでしょう。

 

 3. グローバル化に向けて


 今後グローバル化、とりわけアジア・太平洋地域の国々との関係を強化していくことが極めて重要であると考えます。近隣諸国との連携強化はもちろん、海外セクション代表者( http://www.ieice.org/jpn/area/ )とも連携を図りつつ目に見える活動を行っていく必要があります。

 幸い英文論文誌(IEICE Trans. on Communications)ではアジア各国、とりわけ韓国、中国をはじめとする近隣のアジア諸国からの投稿が大幅に増えており、2006年の統計によりますと日本国内からの論文件数の割合は全体の26%にしか過ぎません。これはIEICE Trans. on Communicationsが高い論文品質を保ちながらも迅速な査読により投稿から掲載までの期間が短い点が高く評価されているからだと思います。しかしながら、日本以外の会員に対する論文誌以外の情報提供サービスは必ずしも十分ではありません。これからは、少なくとも、通信ソサイエティの英文ホームページを充実させ、出来る限り日本語での情報提供と同等の情報提供をめざして努力していく必要があります。そして、本会、本ソサイエティがアジアと世界の架け橋となるゲートウエイの役割を果たしていく必要があるでしょう。

 

 4. 更なる発展に向けて


 ユビキタスネット社会の到来を目前に迎え、当学会、当ソサイエティと社会との結びつきは益々強くなり、学会の社会的な使命や社会貢献が大いに期待される時代になりつつあります。その意味で、会員に対して高度な専門情報をタイムリーに分かりやすく提供していくことも重要ですが、一方では中高生はじめ一般国民に対して情報通信技術に関する啓発活動や、ネットを使う上での有用な知識や注意すべき点などの情報を提供していくことも今後益々重要になるでしょう。

 本年度会員の皆様に対して本格的なアンケート調査を行っています。このアンケート結果に基づいて、より良いサービスの提供に務め、常に会員の皆様の期待に添えるよう努力していきたいと思います。そして、皆様に、より身近な存在に感じて頂ける通信ソサイエティをめざしてがんばっていきたいと思います。