設立趣旨

近年のコンピュータ技術の急速な進展により,コンピュータはそれを用いる人間の生活環境において不可欠なものとなってきています.それは,時には巨大な情報・知識空間であるWorld Wide Webへの案内人であり,また現実社会の場面では人間同士のコミュニケーションを陰ながら支える良き仲介者でもあります.現実社会であれ仮想空間であれ,コンピュータとのインタラクションやコミュニケーションは,今後われわれにとってますますその必要性を増すであろうことは想像に難くありません.従って,情報工学の分野では,人間とコンピュータの間でいかにして円滑なコミュニケーションを成立させることが可能であるかが議論の中心となる場面が近年数多く見られるようになってきています.

翻って考えるに,これまでのコミュニケーション研究において中心的な課題として想定されてきたのは,人間同士のコミュニケーションにおけるシンボル操作,特に言語情報の伝達と理解のメカニズムでした.しかし,コンピュータは元々シンボル操作に適したものですが,単に人間がコンピュータを利用するだけでなく,積極的に意思疎通を図ろうとした場合,そうしたシンボル操作だけでは限界があることは明白です.従って,映像や音声などのマルチモダリティ技術の進展とも呼応する形で,人間同士のコミュニケーションを支える非言語情報の役割を解明し,それを人間とコンピュータの間のコミュニケーションの確立に役立てていく必要があります.

ヴァーバル・ノンヴァーバル・コミュニケーション研究会(以下VNV)はこのような問題意識を背景として,人間同士のコミュニケーションを支える言語(ヴァーバル)情報と非言語(ノンヴァーバル)情報の役割に焦点を当て,両者の効果的な統合により人間とコンピュータ間のコミュニケーションを円滑にする技術と,説明力のあるコミュニケーション・モデルの構築を目指し,2005年10月に電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)の第3種研究会として設立されました.


活動目標

VNVが最終的に想定する目標は「言語情報と非言語情報の効果的な統合に基づく,人間=コンピュータ間コミュニケーションの円滑化技術の開発,およびコミュニケーション・モデルの構築」です.しかしながら,研究の性質上,文理融合的な側面が強いため,拙速な工学的技術開発よりも,むしろ〈コミュニケーションにおける言語情報と非言語情報の役割の解明〉という問題意識の共有といった形での議論の深化を重視しています.

具体的には,情報工学,認知科学,心理学,言語学,社会学,人類学といった様々な分野で活躍する若手研究者を積極的にメンバーに加え,ややもすれば発表者による一方向的な情報提供という形に陥りやすい学会形式の運営を避け,個々人の研究発表をトリガーとした広域的なディスカッションを展開していく点をVNVの最大の特色としています.また,言語コミュニケーション・非言語コミュニケーションについてのサーベイによる知識共有も,メンバー間のディスカッションの有機的な相互作用と新しいアイデアの創発を促進することが期待されるため積極的に行いたいと考えています.


活動形式

運営方針としては,コアメンバー約10〜20名と自由参加者による隔月での研究会開催を基本とし,毎回1名の話題提供者を指名します.また,研究会における実際のディスカッションの議事録や資料を,左メニューの「会員限定」ページにて(会員にのみ随時閲覧可能な形で)公開します.これは,実際の研究成果として収束する前の「生の」ディスカッションの中に,未完成であっても多くの無視できないアイデアの萌芽が認められると考えるからで,またそのような可能性を持ったインタラクティブな研究会にしていくべきだという我々の主張も含まれています.

さらに隔月での研究会の他に,アニュアルミーティングとして,他学会でのワークショップやチュートリアル,企画セッションなどの開催も予定しています.

研究会開催の連絡は当ウェブページやメーリングリストで行います.会員資格に関しては問い合わせフォームからお問い合わせください.